それぞれの情事

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「し、少々お待ち下さい」 誰か手の空いてる人はいないか!? あれは…! 「か、神崎先輩!」 「えっ!ええっと、な、何かな?」 「あのお客さんがギターのネックを直して欲しいらしいんですけど、オレじゃわからなくて…」 「えっ!お客さん!?う…ううーん…わ、わかったよ」 何とか神崎先輩を捕まえたんだけど…。 「お、お待たせしました!ネックですね!は、拝見させて頂いてよろしいですか?」 ……カッチコチだ。オレ以上なんじゃないのか? 「こ、このくらいならすぐに、ち、調整出来ますので、て、店内でお待ち下さい!」 神崎先輩がそう言ってお客さんはレジを離れた。 「神崎先輩、すいません」 「い、いいよー。じ、じゃあ私はこれを直すね」 神崎先輩は作業に取りかかった。 オレは少し離れたところから様子を伺っていたが、作業内容が気になって覗きに行った。 「へー、そうやって直すんですね」 「ひゃっ!う、うん。つ、椿くんもすぐに覚えるよ」 あ、初めて名前で呼ばれた。 「先輩はこういう仕事長いんですか?」
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