プロローグ 手駒

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紅い長い髪を靡かせて、朧月を眺める一人の少女が居た。 淋しげに民家の屋根の上に寝転がる。 ただ無言で何かを求めるように空を仰いでいた。 異界の船が飛ぶ江戸の空。 少女は憎そうにそれを睨みつける。 そしてふと、少女の傍に一人の青年がやってきた。 少女は気配に気づいているのにも関わらず、ただ空を見る。 暫く沈黙が続いた。 その沈黙を破ったのは少女:紅 「…私を捕まえに来たワケ?」 「…なんで命令を無視した?」 青年は紅の問いかけに答えずに逆に問いかける。 紅は一言言う。 「…あの子が…大切だから…」 「あの、安達夕菜がか?」 紅は頷きもせずただ身体を起こす。 「…いくらなんでも…命令を無視したお前は追放される。 俺達は死んだ人間の中から選ばれた死者を黄泉へ送る死神のような存在。 特別な力を持っている。 お前は…人々の肉体を操る力をもっている…」 「だから?」 「…だったら何で安達夕菜の記憶を取り戻させた? 安達夕菜をこの世界に送り込む条件として、声か記憶のどちらかを失う。 なのにお前は両方取り戻させた…。 いくら何でもあのお方…、 死神界の議長様は怒ってやがる…」 「それで?私の刑は?」 そっけなく返される言葉についに青年は怒鳴る。
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