プロローグ

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青春真っ只中の中学三年生。 受験を控えた一週間前に事は起こった。 朝、俺はいつも通り携帯のアラームで目を覚ました。カーテンの隙間から窓の外を眺めると、快晴。 ああ、今日はなんて気持ちのいい朝なんだろう。希望の朝だ。 寝ぼけた頭でぽやーっと考えを巡らせつつ眠気と戦う。 二度寝しちゃえYO!という魅力的なお誘い―いや、悪魔の囁きを丁重にお断りして学校へ向かう支度をする。するとほら、天使が良くできましたって褒めてくれるから。 …ねぇな。今のナシ。 完璧痛い子じゃん俺。 さて、気を取り直して毎朝恒例のメールチェック。新着メール一件。送信時刻は早朝。送り主は思った通りいつもの奴。これはもう当たり前となりつつある―て、いやいや、いくらなんでも早いだろ。と毎回思うわけで。 寝間着のスウェットは少し薄いのでいくら暑がりの俺でも朝は寒い。布団から這い出ると直ぐに着替えてしまう。制服が着崩し気味なのは当たり前で日常茶飯事。 最早、教師も悟っているので最初の頃はあった注意も今ではごくたまにしかされなくなった。 洗面所の鏡の前で軽くワックスなんか使っちゃって髪形を整える姿は正に今時の男子中校生。ナルシストではないつもりなので四六時中気にしている訳では無いのだが、寝癖はいただけない。 リビングへ向かうと用意されたトーストと珈琲の匂い。苦いのは苦手だからミルクを加えて飲む。 両親は共働きなので朝は大抵どちらも居ず、朝食が毎朝用意されている。 珈琲が冷めていないので家を出たのは俺が起きるまでのほんの数分前に出て行ったんだろう。 別に貧しいわけでも裕福なわけでもなく、ごくごく普通の一般家庭だ。 俺はそれなりに愛情を注いでもらっている一人っ子。俺の考えを尊重して、理解してくれる。 俺が家に帰らない日も少なくはないのだが、咎めたりはしない。何処で何をしているのか、口にしたことはないのだけれど問い詰めたりしない。 ただ、帰ったらお帰りと一言、言って笑ってくれる。 理解のある両親だと思う。 だから俺は問題事を起こしたこともないし起こそうとも思わない。夜の集まりだってそこまで悪目立ちしている訳でもない。 …まあ、その話は今は置いておくとしよう。 パンを口に放り込み最後の一滴を飲み干すと、丁度良い時間だ。いつも通り。 そう、いつも通りだったんだ。 この時までは。
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