7355人が本棚に入れています
本棚に追加
「合格おめでとお!総ちゃん!」
ぱちぱちぱち。
「………は?」
この時の俺は、人生最大の間抜け面だったと思う。
訳分からん。
だって俺、受験日まだだもん。
まだテストしてないもん。
…訳分からん。(大事な事なので二回言いました)
嫌だ、とてつもなく嫌な予感がする。
もう既に逃げ腰の俺に対して、にんまりと三日月のように口の端を吊り上げて笑ったその姿はチェシャ猫のようだ。楽しそうな、悪巧みの笑み。
コイツの名前を、白銀唯という。
不愉快極まりないが、一応俺の幼馴染だ。切っても切っても切れない腐れ縁といった仲。
可愛らしく愛くるしい容姿をしている癖に、歪んでいる愉快者だ。緩くパーマの掛かったふわふわした柔らかい髪質に二重の瞳。背丈は一般男子の平均身長としては少し低めだがコンプレックスではないようだ。一言で言い表すのならば美少女。
対して俺、黒崎総司は長身の部類に入る背丈であり切れ長で鋭い目つき。
やはり話し掛けられることは愚か、近くに寄るだけで怖がられる始末。それに加えて制服の着崩し、染めた茶髪、耳に十字架のピアス。
お近づきになりたいわけないに決まっている。
それでも視線を感じることが多いのは、顔は悪くなく、むしろ整っているからだと微かに頬を赤らめて半泣きで告白してきた女子生徒によって気付かされた。
…いや、何故泣く。
そして同性の一部からは訳も分からず慕われていた。
俺は、何もしていない。
あえて言うならば、殴りかかってきた生徒の数人を一人で返り討ちにしたこと位だ。
伊達に不良をやっていないから喧嘩慣れはしている。ちょっとやそっとの相手じゃ簡単にやられたりはしない。
だから、そんなことが伝説になっていたなんて俺は知らない。
…おっといけない話が逸れた。
まあ、そんなこんなで充実(?)したような学校生活を送って、近場の志望校に向けて後は勉強だけだ!
そう意気込んでいた俺に掛けられたのがさっきの言葉だ。
最初のコメントを投稿しよう!