プロローグ

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「裏口入学、だよ!」 しーっなんて人差し指を口に当てながら片目を瞑り小声で、そんな姿に相応しくない言葉を平気で口にするコイツの神経を疑った。 頭、大丈夫だろうか。 別に心配している訳ではない。 ただ、俺に関わってほしくないだけだ。コイツに関わるとろくなことがない。というか、何で俺が関係してくるんだ。 一人で逝け。どうか一人で逝って下さい。(変換ミスではないはず) 「やだなあ、俺がそんな全寮制の、しかも男子校なんて行くわけないじゃーん。羊が一匹狼の中に放り込まれたら僕食べられちゃうっ!だーかーらぁ、お願い。一人で逝ってこい」 語尾に、はあとがつきそうな甘ったるい口調に殺意が芽生えたのは仕方が無いことだと思う。というか、もはやお願いではない。 命令だ。 そもそもお前は羊の皮を被った狼だろうが。そして人の心を読めるのだろうかと全力で疑問に思う俺は間違っていないと思う。 俺が律儀にも一つ一つツッコミを入れている間にも天使のような容姿をした幼馴染は鼻歌を歌い、ご機嫌の様子。 その姿を見て頬を赤らめたり微笑ましく見守る奴らに言ってやりたい。お前らの目は節穴か。 コイツは悪魔だ、と。 暫く呆けてた俺だがふと、悪魔―もとい唯と目が合う。 ぱちっと可愛らしくウインクされた。 俺がコイツと赤の他人であれば少しは愛らしいとも思えたであろうその仕草も、もはや内面を知ってしまった俺としては憎たらしいという感情以外に何も生まれてこない。 これは不幸の前兆だ。 俺には、未来が読める。 我ながら痛い発言だと思う。 しかし普段は読めなくとも、今なら読めた気がする。 でも、全然嬉しくない。 この幼馴染のご機嫌な様子を見て、良いことなんてあったか? 否、ない。 絶対になかった。 それはつまり、現在進行形なわけで。 え、 コレって本当に入学しちゃうパターンですか?
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