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ドアの前に立っていたのは…
スーツをピシッと着た、なかなかイケメンの男性だった。
ってか何で俺ん家にいるわけ…?
「お前、誰だよ…
あ!
強盗か!?
琴美と竜はどこだよ!!」
まぁこれが普通の反応。
「落ち着いて下さい。
佐藤龍次さん。」
「……!?」
何で、俺の名前…
「お前、何なんだよ…」
「先程も申しましたが、あなたの使用人です。」
「そんな事はどうでもいいんだよ…」
使用人なんて頼んだ覚えないし。
「では、率直に言います…
12:26に龍次様は事故でお亡くなりになりました。」
「……はぁ?」
何を言ってるんだ、こいつ…
第一、ここ俺の部屋だし。
「真面目に答えろ…」
少しむかついたので、睨みをきかせる。
「私は常に真面目ですよ。
でしたら…
ドアから外の世界を覗いて見てはいかがですか?
信じざる負えないんじゃないかと思いますよ。
ただし、ドアから向こうには出てはいけませんよ。
契約が出来なくなってしまいますから。」
外って…
普通に目の前には竜の部屋があって、階段を降りれば琴美が朝食を作っている。
それはきっと変わらないはず…
なのに、何でこんなにも不安なんだ?
これじゃあまるで、こいつの言ってる事を、真に受けているみたいじゃないか…
よし…!
がちゃっ
俺は思い切ってドアを開けた。
「………え?」
な、んだ、これ…
龍次が見た景色は、どこを見ても白一色で、何もない、ただの"無"の世界だった。
「りゅ、う…琴美…は?」
何で何もないの?
誰もいないの?
俺が外に出ようとすると、使用人に止められた。
「…分かって、頂けましたか?
ここはもう、龍次様が住んでいた世界とは違うのですよ。
ドアから向こうに行けば最後…
あなたは永遠とこの無の世界をさ迷い続けることになります。」
「なぁ…」
「はい。
何でしょう?」
「俺…死んだの?」
違うと、嘘だと言ってほしかった。
心の中で、これはまだ夢なんじゃないかと信じたかったから。
「はい…
龍次様は即死のため、自覚がないまま亡くなったのです。」
これが、現実なのか?
「い、嫌だ…
嘘だろ?
まだ…死にたくない……
琴美、竜。
俺を助けてくれよぉ…
なぁ、お前もどうにかしてくれよ!!!」
ガタガタガタ
体が震える…
ふ、ざけんな…
まだ俺28なんだぞ?
やりたい事だって山ほどある。
何で?
何で、俺なの…?
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