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まるで君臨するかのようにそびえ立つ高等部の校舎を仰ぎながら、正門をくぐった。
敷地面積は隣接された大学の方がずっと大きいのだが、校舎だけを見るならば学部が枝分かれしているそこよりもこっちの方がでかい。
一学年20近いクラスがあれば、必然的に巨大になってしまうのも当然の話。
しかしなぁ。
鞄を持つ手を替えながら嘆息する。
夏休みも毎日のように通ったせいで、新学期という気がしない。
前年のまでのように山のような書類を渡され、「これを休み明けまでに仕上げてこい」と言う拷問を生徒会員全てが嫌がったので、今年は1日数時間掛けて仕事をすることに決めた。
――が、それは6月末の試験前のこと。
まさか7月の頭に月華が転校してくることも、まるで新婚夫婦のように同棲出来ることも、想像すら出来なかったから決めたことで。
週3~4回ある生徒会の集まりを、正直舌打ちを何度繰り返したか分からないほど忌々しく思ったものだった。
そしてこれからが、忙しさピークに差し掛かる。
1クラス、30ちょいのクラスが学年で18個。
単純計算で約2000人弱のマンモス校、催事として動く金額も半端ない。
昨年の多忙過ぎた祭りの前を思い、校舎の裏に広がる青い空を再び仰いだ。
思い起こすのは愛しい彼女のこと。
最早生活する上での半分は、彼女に侵食されていると言っても過言ではない。
俺がしばらくまともな時間に帰れないって伝えたら、月華、寂しいって泣きそうだなぁ――。
泣いた顔もそそられるくらい可愛いからいいんだけど。
ちょっと朝から危ないことを考えながら、玄関を通過し、7階までの直通エレベーターにカードキーを通した。
7階には理事である祖父と、訳あって謹慎中の学園長の部屋、そこに生徒会室のみが存在する。
それぞれがある程度で仕切られているとは言え、数個の部屋を持ち、光熱費を心配したくなるほどの広さを抱えていた。
しかも――俺が会長に就任してからは、孫煩悩な理事長が「俺専用の部屋」なんかを設置してくれたから、より広大なスペースを所有することになったのだ。
いくらじいちゃんのポケットマネーから出来たそれでも、「無駄」と弥生に吐き捨てられた俺は、まさか近い将来に大活用するなんて夢にも思っておらず、そのときは素直に頷いてしまった。
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