1⃣ さぁ、物語の幕開けだ

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   聖徳学園での生徒会の役割を説明しておこう。  他の学校などと特に差はなく、主に大きな祭りを取り仕切る。  勿論、日を決めて行われる全校集会なども生徒会が運営する1つの行事だが、主なものは一学期にある体育祭と、これから二学期にある聖徳祭だ。  卒業生を送る会、や新入生を迎える会、など。  いかにもな名前をつけたものもあるが、そんなものはこの二大祭りに比べれば、造作もないものだ。  特に聖徳祭は、年間の行事の中で1番大きく長い期間行われる。  全校生徒が楽しめるものなので、生徒会としても自然と力が入ってしまうものだった。  体育祭には得手不得手があるだろう。  所詮体育祭の主役は、道也や同じクラスの明智宗治、来年からは月乃丞などの特待生の独壇場になることが多い。  玉転がしや棒倒しなどの集団競技ならまだそうでないとも言えるが、リレーや騎馬戦などになってしまえば個人技が物を言うことは口にしなくても分かっていただけるだろう。  しかし、裏を返してみれば。    梓のように運動神経が皆無な人間にとってみれば、それは1年で1番楽しくない日と言ってしまっても過言ではないだろう。  事実、体育祭の主役ともいえる活躍をしている彼氏の後ろで、世の中を呪詛でもしているような暗い顔で、その1日を梓は生きている。  そんな人によっては、明と暗をはっきりと分ける祭りだ。  が、聖徳祭はそうではない。  確かにクラスで出し物は競うのだが、それまで長い時間を掛けて協力して何かを創り出すというものは、よほどでなければ楽しいものだし。  運動が苦手でも楽しむことは可能だ。  かと言って、手先が器用でないから何も出来ないということは、殆どの場合なく。  他の学校に比べると予算も多いため、よっぽどでなければ自分たちの思い通りのものを作ることが出来るのだ。  聖徳祭は楽しめないものがいない訳がない。  一人よがりかもしれないが、それが俺の持論だ。  そして、それを運営できる生徒会という仕事に。  このときばかりは誇りを持って臨んでいる。 *
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