2人が本棚に入れています
本棚に追加
四角い窓の外には雪が舞っている。
どことなく柔らかく、それとなく謙虚に。
そんな優しい白い結晶の奥。
小高い丘に凛々と佇む桜の木。
幻想的な風景が、彼女にとって唯一の喜びだった。
外の雪とは裏腹に、簡素な白いベッド。
その上に腰掛け、悲しげな瞳をしている。
彼女の名前は藤崎芽衣(フジサキ メイ)。
病弱な彼女は一年の殆どを家の中で過ごしていた。
陽に当たらない肌は、透き通るように白く綺麗で。
長めの黒髪が一層と引き立てる。
その美しさ故に、やせ細った身体は痛々しく。
触れれば壊れてしまうような錯覚を感じた。
最初のコメントを投稿しよう!