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やがて季節は移り変わった。
暖かい風が舞い、春の訪れを告げる。
窓から見える桜には点々と、薄桃色の蕾が花開く時を待っていた。
そんな爽やかな季節とは裏腹に、芽衣の身体は日に日に弱っていく。
ベッドから起き上がるのも困難になり、唯一の救いすら眺められない。
生かされている。
ただ、それだけの感情が心を蝕んでいた。
不意に、窓を叩く音が聞こえる。
視線を動かし、窓へと目を向けた。
微かに見える窓の縁には、髪の毛であろう黒い物が揺れている。
不思議に思っていると、窓が開いた。
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