窓の外

4/5
前へ
/12ページ
次へ
やがて季節は移り変わった。 暖かい風が舞い、春の訪れを告げる。 窓から見える桜には点々と、薄桃色の蕾が花開く時を待っていた。 そんな爽やかな季節とは裏腹に、芽衣の身体は日に日に弱っていく。 ベッドから起き上がるのも困難になり、唯一の救いすら眺められない。 生かされている。 ただ、それだけの感情が心を蝕んでいた。 不意に、窓を叩く音が聞こえる。 視線を動かし、窓へと目を向けた。 微かに見える窓の縁には、髪の毛であろう黒い物が揺れている。 不思議に思っていると、窓が開いた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加