2人が本棚に入れています
本棚に追加
「君の名前は?」
窓の縁に肘をつき、ニコニコと問い掛ける桜良。
「………芽衣。植物の芽に、衣服の衣で芽衣」
相変わらず素っ気なく答える芽衣。
しかし、それは先程の高鳴りを抑える為だった。
「良い名前だね」
そう言う桜良に、何て返せば良いか解らなくなる。
少し気まずい沈黙が流れた。
「……何しに来たの?」
その空気に居たたまれなくなり、芽衣が口を開く。
「最近、芽衣のこと見ないなと思って。…ほら。いつも此処から、あの桜の木を見てたでしょ?」
芽衣は驚き言葉を無くす。
まさか、自分を見ていた人が居たなんて…。
嬉しくも、気恥ずかしい気持ちになった。
「別に…。そんなの私の勝手でしょ?」
冷たく返された桜良は、相変わらず微笑んでいる。
だが、どことなく寂しそうな笑みだった。
最初のコメントを投稿しよう!