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「拓!聞いてるの?」
「聞いてるよ。で、何の用?」
「はい。お母さんがあんたに持っていけって」
差し出されたのは弁当。
俺にとって、こいつの母親は母親代わり。
親子そろっておせっかいだけど、感謝してる。
いつもは俺がアキの家まで弁当を取りに行くんだけど、めずらしくアキが届けにきた。
健には申し訳ないけど、少しだけ嬉しく思っていた。
「ありがと。おばちゃんにお礼言っといて」
「わかった。風邪には気をつけなよ?」
そう言いながら、赤色の傘を俺に差し出す。
俺は返事の変わりに少し笑って傘を受け取ると、いつもの道を歩き出した。
「あいつ、また赤かよ・・・」
俺はあいつの傘を強く握った。
物心ついたときからアキは俺の隣にいた。
そして、いつのまにかアキは俺の中で、信じられないくらい大きい存在になっていた。
どれだけ離れようとしても、離れない。
気がつけば傍に居る、そんな存在だった。
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