ひーちゃん

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走る。僕は走る。とにかく走る。 彼女から逃げるために。 なんで彼女から逃げなきゃいけないのかなんて、僕にだってわかるはずがない。 普通なら彼女から逃げるなんてありえない。 いつもみたいに笑って、怒って、悪さをすればデコピンでもして終わりのはずだった。 だけどこんなの、デコピンで済む悪戯ではない。 そもそもアレが本当に、彼女自身であったのかも不明だ。 何故なら、僕はあんな狂喜した彼女を見た事はなかったからだ。 「いたぞ!!捕らえろ!」 角を曲がった先には、彼女の召使いがいた。彼等もまた僕を追う人間であり、無条件に彼女の味方をする人達だ。 僕はひたすらに逃げて彼等を振り払う。しかしこれも時間の問題だ。結局は悪あがきに等しい。 何故なら僕には味方が一人もいないし、此処は孤立した小さな島であり、又此処にいる人達全員が彼女の手にかかっている人達だからだ。 「ひーちゃん」 不意に、後ろから言葉が投げられた。 そんな風に僕を呼ぶ人はこの島に一人しかいなく、世界中探しても一人しかいない人。彼女だ。 「ちゃんと逃げなきゃ。これは鬼ごっこなんだから」
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