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「ん?どうかしたのシュル?」
「いいえ、何でもありません。」
いくら何でも、公女の顔に見とれていた。とは口が裂けても言えない。
シュルはそのユリイの真っ直ぐな目で見つめられていたせいか、恥ずかしくなり目を窓の外を見る。
その時、不意に窓の外を見ると、建物と建物の間にある路地に入っていく人影の中に顔に傷のある男を見つけた。
「……。」
「もぅ…。さっきからどうしたの?そんなにそわそわして、私はパーティーは嫌いだけど逃げ出したりはしないわよ?」
そんなにそわそわしていたのだろうか。とりあえず、ユリイの護衛でいる立場として心配させるのは不甲斐ない…。
「そうですか?ユリイの逃走経路を探していたんですが…。」
少しその場を和ます様に言ったつもりであったが、ユリイは真に受けたのか怒った様に頬を膨らます。
「冗談ですよ冗談。」
「失礼します。御二人共そろそろ着きますよ。」
馬車の運転手がそう言うと、馬車はいつの間にか、城の庭の中を走っていた。
城の庭の手入れをする庭師は全員、こちらを向き頭を下げている。
城の玄関口には三人の人影が見える。
一人は、初老の男性。一人は、侍女と、シュルよりは軽装備な鎧をきた女性がいた。
ユリイはその内の二人を見た瞬間に溜息を深くつき怒られると思ったのか震え出した。
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