花鳥風月

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馬車が城の前に到着すると燕尾服を着た初老で白髪の執事長であるマサが扉を開けると、ユリイに手を差し延べる。 マサの行動には寸分の狂いも無く、まさに執事の鏡である。手に着けている手袋には王家の紋章が入っておりよりマサを際立たさせていた。 「お帰りなさいませ。フルール姫。シュル近衛団団長もお疲れ様であった。」 「フルール姫。これから御着替えの支度をするのでこちらへ。」 ユリイの専属侍従のマヤがそう言うと、ユリイは渋々と城の中に入っていく。 ユリイは入り際に、こちらを向き口パクで。「また、後でね。」と言うと、静かに微笑みながら入って行った。 「全く、姫様にも毎回困らせられますね。」 シュルに近寄って来たこの軽装の女性はセルシア。 シュルが選んだ唯一の副官である。情報能力と他に類を見ない俊敏さを買われ今に到るのである。 「そうだな。まぁ…でも昔からは何も変わらないからな。」 そう名残惜しげにユリイを見ているシュルにセルシアは膨れっ面になりながら手に持っていた書類を押し付ける。 「さッ!!行きますよ!訓練生が修練場で待っていますよ!!」 「おっ…おう?」 そう言ってセルシアに強引に押されながら、長い長い廊下を歩いていく。
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