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『続いてのニュースです。
昨夜、貿易会社 喜怒哀楽の幹部が麻薬の密輸に関わっていたことを自首し、この会社の社長と幹部、麻薬を受けとったとされる暴力団の幹部らが逮捕されました。』
「今回も、よくできました。」
「…………………。」
「しかし、逮捕されたのは一部の人間だけだから、残党がまたやるかもね。」
ここは、私の家。
朝6時。私はまだパジャマ姿。しかし、目の前の彼はスーツ姿。
朝のニュースの時間。
『しかし、今回の一件には未だ解明すべき謎があるようです。この取引に直接関与する人物は検挙されましたが、まだ調査の必要があります。
気になる点がまだありまして、自首した幹部は取引のための現金を盗まれ、その上、薬物も全て燃やされてしまったと供述しており、何者か、第三者がこの事件に関係していると…』
「…………いつも言ってるよね、それ。」
「まぁ、本当のことだからね。」
私の名前は神谷 令子。
14歳、中学生。
職業は、怪盗見習い。
目の前の彼が、私をエスコートしてくれている。
「しかし、かれこれ怪盗術を習い始めてこれで三年目か。成長したね、氷結(ブリザード)。」
「…氷結はやめてって言ってるでしょ。」
「いやだなぁ、褒めてるんだよ。素直に喜んで欲しいなぁ。」
彼とは、特に血の繋がりもない。でも、私の野望に付き合ってくれている、兄のような存在。
変態だけど。
「何なら、いっそ俺を兄と思ってくれていいんだ、妹よ。」
「妹のことをコードネームで呼ぶ兄なんて、この世に存在しません。」
「う、手厳しいな…」
当たり前です。
「…一緒に朝食でも、いかがでしょう。」
「頂こう、妹よ!」
「妹じゃ、ありません。」
これから学校なので、そろそろ支度しとかないと。
「まぁ、焦らなくても、あいつはいずれしっぽを出すよ。焦らずに任務を続けていけばいい。」
「…ありがと。」
私はキッチンに向かった。
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