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私の嗚咽だけが響く部屋。
覆ったままの大きな手がひどく心地良い。次第に落ち着きを取り戻して涙も渇き始めた頃、耳元に低い声が通った。
『お前はガキだけど、俺はそういうお前が好きだよ』
渋い良い声。
心臓が破裂するかと思った。
次に手が退いて
ひらけた視界の中に彼がいた。
私を安心させるように至極優しい目をして。
あぁ、愛しい人。
遠慮がちにそっと、彼の頬を包んだ。
温かい。一瞬彼が泣いているように見えて、そのまま瞼に口づけた。
『泣かないで』
彼は笑った。
『それは俺の台詞だろう?』
彼の腕が背中にまわる。
おでこ同士をコツンと当てたら
また涙が出てきた。
『全く、泣き虫だな』
貴方はまた笑った。
意地悪な、貴方。
私の事なんか全部見透かしてるんだろう。
余裕な顔も、大きな手も
煙草の匂いも、時折見せる優しさも
何もかもが好き。
ずっと一緒だよ。
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