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『おい、走ると転…んだな。』
昨日雪が降った。
朝には見事に積もって、街が白く染まった。私は早速彼を呼びつけて散歩中。
全てが白くキラキラしている。
足に感じる雪独特の感触が嬉しくてはしゃいでいたら
コケた。
差し伸べられた手の先には半分呆れたような顔。
私が雪にまみれたまま手をとることもなく空を見つめていると、彼は私の脇に手を差し込んで起き上がらせた。
ガキか、私は。
内心で口走った言葉に返事が来た。
『ガキだろう?』
…エスパー?恐ろしい男だ。
私をちゃんと立たせると、彼は私の服についた雪を払い始めた。
雪がぱらぱらと落ちる。
綺麗なものが落ちる。私から落ちてく。
やめて。
私は彼を押し倒した。
彼は一瞬驚いた顔をして。
『…どうした。』
低い声が問う。
『…雪は綺麗なの。私は、雪に溶けてしまいたい。けれど、私はきっと…汚してしまうの。一つにはなれない。』
自分でも何を言いたいのかわからない。
ふいに腕が伸びて、私は彼の温もりに包まれた。あたたかい。
『俺と一つになればいい。』
けして綺麗ではないが、と彼は言った。
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