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窓が曇っている。
どうせ外も積もった雪で真っ白だから、そう変わらないだろう。
今日も雪が降るだろうかなどと考えていると扉がノックされた。来客だ。
『はいはい』
この寒い日に、誰だろう?
小走りに玄関に行ってみると立っていたのは彼。
『どうしたの?いきなり来るなん』
言い終わる前に強く抱き締められて、むせそうになった。
どうしたの?
汗が、尋常じゃない。体が冷たすぎる。
『ねぇ…大丈夫?』
なだめようと背中に回した手が、何かに触れた。
何…これ…
彼の背中から突き出すそれは、固く動かない。明らかな異物。
ザワつく胸を抑えつつ彼の背中を見下ろしてみた。
息が止まった。
彼の背中は、真っ赤に染まっていて。
真ん中に、刃物が深く刺さっていた。
なんで?誰がやったの?
開いたままの玄関から見えたのは、彼の足跡に添って雪を染める鮮やかな赤。
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