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『救急車…』
泣き崩れそうになるのを堪えて携帯を取り出すと、彼がその手をそっと抑えた。
『…っいいから…』
息が荒い。
『しゃべんないで…血…血を止めなくちゃ』
彼の腕を解こうとするが動かない。
『大人しくして…ねぇっ死んじゃうよ…』
彼が死んでしまうかもしれない。
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
『亜希』
いつも呼ばない名前を呼ばれてハッとした私のすぐ前に彼の顔があった。
『あ…』
『泣き虫』
そう言って苦しそうに、笑った。
こんな時にまで私を茶化す。
もう、この人は。
だって貴方が、と言いかけたら
また名前を呼ばれて黙ってしまった。
『…亜希、聞いてくれ』
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