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おれは窓に寄り掛かり、ずっと外を眺めてた。
新幹線は相変わらず止まっては走り、止まっては走りを繰り返していた。
するといきなり、リュックをしょった元気なおばちゃんが、
「ここの席空いてるかしら?」と言った。
おれと優の座っていた席は、よくある四人席のとこだった。
ちょうどよく、前の席には誰も座っていなかった。
「あぁ、空いてますよ。どうぞ……」
「ありがとねー」
おばちゃんはニコッと笑ってヨイショと言いながら席についた。
「僕たちは、旅行か何かなのかな?」
さっそくおばちゃんが聞いてきた。
「あぁ、おばあちゃんとおじいちゃんのとこに行くんです、親が出張で…」
とおれは礼儀正しく答えた。
「そう…、大変ねぇ」
そう言うと近所のおばさま方と同じ感じで手をちょいっとやった。
いつもならこのありきたりな会話も人との触れ合いも多少は楽しめただろう。
しかし、疲れてる今はただ疲れを倍増させるものでしかなかった。
優はおれの隣でチョコンと丸まってスースーいいながら寝ていた。
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