存在

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温かな温もりは今はない。1年前まであったものは今は無い。2度と同じ春が来ないと同じで2度と同じ日々は来ない。色んな所に連れて行ってくれるお父さん。優しくて微笑んでいるお母さん。 ただいまと言っても今は温かなおかえりは返って来ない。温かな温もりはどこかに消えてしまった。美味しい料理に団らん。楽しかった。1年前。 自分で作る料理は不味く、嗚咽をこらえる自分が居る。 会いたいと何度も願ったが居ない存在は返って来ない。 1年前の明日は戻って来ない。 母さんは心臓が弱く度々発作を起していた。1年前の今日、発作を起した。すぐに救急車を呼んだそら。 「大丈夫。母さんはまだ生きる」 母は口癖のように言っていた。病院ですぐに入院をすれば笑って居た。父はすぐに行くと電話の向こうで言っていた。 父は事故を0時に起した。そう、1年前の明日。それと共に母は発作を起した。母に付き添っていると父が運ばれて来た。 0時45分。両親を失った。残ったのはそらと父と母と過ごした思い出。 命日が近付けばそらは元気がなくなって毎年熱を出していたと真菜から聞いた。僕、川崎昴は初めて知った。 明日どんな顔で来るのだろう。 そら。2度と親に呼ばれないこの名前。 明日にならなければいいのに。 時は止まらない。
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