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「年寄り虐待反対!」
お客様をあまり待たせるわけにもいかず、背中に鼻血ボタボタのおじいちゃんの叫びを受けて居間に戻ることにした。
ハーーー。
自然とため息が漏れる。
さっきまで総司さんと過ごした時間であんなにも幸せだったのに。
窓の外の星空は、雲一つなくてあんなにも綺麗なのに。
あたしの頭の中はぐちゃぐちゃのごちゃごちゃ。
キンパツの元に戻るのが憂鬱で歩く速度も遅くなるけど、いくら広い家でも、ほんの30秒そこそこで着いてしまった。
居間は襖がまた閉められていて、居間の前で一つ呼吸をしてから開けた。
「お待たせしてしまってごめんなさい」
あくまでもお客様であって、許婚とは認めてないあたしは、キンパツに向かってお客様扱いの対応をする。
「いや、平気。つーか、何にも聞いてなかったんだ」
あたしとは対照的な態度のキンパツ。
初対面に馴れ馴れしいヤツってなんかイヤ。
ムッとしたけど、そこは顔に出さないでいるヘタレなあたし。
初対面に怒れるほどのでっかい勇気は持ってない。
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