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「だって俺ら許婚ってことは、将来は夫婦ってことだろ! だからさ」
「あたしは沖田君と許婚なんて認めてません。結婚する気もさらっさらありませんから!」
いい加減、頭にきて強く言うと、不敵な笑みをあたしに向けた。
(うっ……言い過ぎたかな)
沖田君はテーブルに肘を乗せて身を乗り出す。
その動きに反応して、少しだけ体を反らしてしまう。
強気なあたしは身を引いて、弱気なあたしが顔を出した。
「……とにかく、今日は帰ってもらえませんか?」
どうにかこの状況から逃げ出したくて、さっきのあたしはどこへやら、か細く沖田君に告げる。
沖田君は体を元の状態に戻すと、何か考え込んでいるように天井を仰いだ。
「沖田君? 聞いてます?」
「聞いてる。てか聞いてないのはそっちじゃね?」
「なにがですか?」
「……その“沖田君”ってのやめない? よそよそしいし。あと敬語も」
当たり前だっつーの!
もう二度と会うこともない、真っ赤かの他人なんだから、なんて言えるはずもなく、心の中で思っていると
「だって俺ら、一緒に住むんだしさ。だから隼人でいいから」
「は? は? は……」
ひーふーーへ……ほーー!?
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