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「用っちゃ用だけど……。そんな警戒すんなって」
「するわよ! 初めて会った人に警戒するなってのは無理」
「……まー、そうだけど」
沖田君は少し困ったように笑い、それから真剣な顔つきに変わった。
「あのさ、あんま深く考えんなよ。その……許婚の話。うちの親父と源三郎さんが勝手に話盛り上がって決めたことらしいけど」
「おじいちゃんと沖田君のお父さんが? なんでまた?」
「や、俺もそこまでは。ただ、俺んちが今ごたついてて、それもあって、まー、ただの居候って思ってくれていいから」
「お家が? なんだか大変なんだね」
どこまで聞いていいか分からなくて、他人の家の事情を深く聞くのは失礼だと、あたしは聞きたい気持ちを押し込めた。
今はあたしと沖田君が許婚にされちゃった訳の一端が分かっただけでもよしとしよう。
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