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国から少し離れたところに小さな森がある。“灼けた森”と呼ばれているそこは、名前とは裏腹に焼け野原の寂しい土地ではなく、なんの変哲もない緑豊かな木々が敷き詰められた、普通の森。
なんでもむかーしむかし、城の兵士達が森に棲む“マモノ”と呼ばれる獣達を排除しようと森に入った時の話である。
森が突然焔に包まれ、森を覆い尽くすほど激しく燃え盛った。
兵士達は慌てて森から逃げた。
やがて、焔は前触れもなく起こったのと同様に、前触れなく勝手に鎮火した。
兵士達は驚いたそうだ。
焔が消え去った森はなにも変わっていなかった。木一本、葉一枚も燃えた様子はなく、焔に包まれる前と変わらずそこにあったそうだ。間違いなく焔は森を包み込んでいたのに。
そしてその頃から、森に“マモノ”達の長が現れるようになった。
国中の人間は、焔に包まれ尚そこにある森を“灼けた森”と呼び、その森の長をこう呼んだ。
“マモノ”たちの王――“マ王”と。
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