君色の花/第1章(太妹太・死ネタ)

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そのうちあなたは 重い重い病気を患って、 あなたからの手紙は 日に日に減っていきました。 それでも僕があなたに会いに行くと、 あなたはやっぱり笑顔で、 か細く痩せてしまったその手を 僕に差し出して、 『ピース』なんてして 笑っていましたね。 あなたはだんだんと弱っていった。 声を失い、 視力を失い、 四肢は動かなくなり、 しかしその煌めくような笑顔は、 最期までずっとずっと同じでした。 そして、 あなたの煙は春風と共に 空の彼方へと昇っていった。 あなたが好きだった、 桜の花びらが舞い散るなかで。 …この村で 一番綺麗な景色が見えるこの丘の上に、 白く透き通るような あなたのカケラが眠っています。 一面のクローバー畑、 その遠くに見える影は いつまでも僕の大好きな 笑顔のあなたです。 あなたからの可笑しくて 暖かい手紙はもう届かないけど、 それでも僕は ずっと待っています。 だから太子、 いつか迎えに来て下さい。 きっとその時、 僕はもう泣いていませんから。  
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