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「ご精が出るね、妹ちゃん」
いつものように
太子のお墓の手入れをしていた
僕の背後から、
よく知った声が聞こえた。
僕はその声に反射的に振り返る。
「っ…!
閻魔さん…何しに来たんですか」
「も―、そんな怖い顔しないでよ」
閻魔……
この人、いや、この悪魔は
太子の生前、
冥界から僕らをからかうために
たびたび遊びにやって来ていた。
太子とは友達みたいだったけど、
僕は嫌いだ。
こいつは太子がいなくなった後も
何度も僕の前に現れては僕をからかい、
愉快そうに帰っていく。
人の痛みなど、
知るよしもない。
―…ただの悪魔。
「……あれ、妹ちゃん…
泣いてるの?」
「…泣いて?僕は泣いてなんか…」
目元をぬぐってみると、手には涙の滴がついていた。
自分でも気づかないうちに泣いていたらしい。
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