老いについて。

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ところで私はといえば、前日殆ど飛び回らなかったこともあってか、再度眠りにつくことが出来ずにいた。どうも最近遠くに飛ぶことが億劫で仕方が無い。餌場もなるべく近くに限定するようになったし、途中休憩を挟むようにもなった。若鳥の頃は、さっき迷惑な大声を上げた新入りのように体中に力が有り余り、丸一日だって飛んでいられる気がしたし、弱った雀くらいなら突き殺して喰らったものだ。  今飛び立ったところでなにか収穫が期待できるわけではない。 私は羽繕いをして夜が明けるのを待つことにした。幽かに聞こえる車通りの音はなにか大きなものが押し寄せてくるような、不気味な響きである。 昔遠出をして東京湾まで餌を探しに行った事があるが、その時に見た途方も無く広大な水たまり(海、というのだそうだ)は丁度こんな音を立てていた。或いはその印象が今も私の小さな脳みその片隅に残っていて、さざめく音の連続を巨大なもののイメージと連結するのかもしれない。
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