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Story in girl...3
塔の中は老朽化していてあちこち崩れていた。
滴る雨の残響音がする。
黒く煤けた螺旋階段を二人で駆け昇る。
ふと罪悪感が過った。
地上から離れれば離れるほどそれは強くなって、私は泣きそうになった。
後ろから強い力で引かれる様で。
繋いだ手を離して立ち止まる私に、君は笑いかけて、また手を繋ぎ走りだす。
君の笑顔にも罪悪感や辛さが浮かんでいて、それでも迷いだけはなかった。
後ろから誰か追ってくる。
何かはわからなくて、それは大人だったのか、幽霊だったのか、もしかすると私だったのかも知れない。
でも君の笑顔に勇気を貰った私には関係なかった。
続く螺旋階段や広がる檻や追ってくる足音や、そんな物達はもう気にならない。
気にする気もない。
震えた手には君の声が染みて、もう震えない。
私は走る君の背中を見守りながら、ただ走った。
歯車のギチギチと鳴る音が聴こえる。
そんな時、ふと風が頬を撫でた。
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