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「何故殺した?」
「好きな人がいたんです」
「それで?」
「その人には恋人がいました」
「ふぅん。その恋人を殺したのかな?」
「はい。彼と付き合っているのが羨ましかったんです」
「そうかい」
「彼の隣にいるのが私じゃないなんて耐えられなかった」
「それで?」
「だから、あの女を殺して私が彼と一緒になろうとしたの」
「人を殺しておいて自分は幸せになろうと?」
「そうよ。幸せは奪うモノよ。愛と一緒」
「怖いことを言うね」
「世界の幸せの数値は一定なのよ。人類全体でそれを振り分けているの」
「そうかな?」
「そうよ。同じ人を好きになった二人は、どちらかが幸せになって、どちらかが不幸になるじゃない」
「だから奪う、と?」
「ええ、幸せになりたかったら他人を不幸にすることね。その分だけ数値が周りに振り分けられるのよ」
「奪うしかないのかい?」
「かもね。人間は愚かね」
「それで、幸せにはなれそうかい?」
「私には彼がいれば幸せなんです」
「今の君には彼がいないじゃないか。自分で遠ざけた。しかも、彼は君がいたら不幸になった」
「彼が最初に私を選んでいれば幸せになれたわ」
「でも選ばなかった」
「そう。彼は失敗したの」
「君を選べば成功だったのかい?」
「幸せにする自信はあるわ」
「自信だけあってもね。選ばれなかったら、その時点で諦めればいいじゃないか」
「ところで彼は今どうしていますか?」
「どうだと思う?」
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