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思わず言葉が出てしまう、ここにいるのは私一人、だから安心しているのかもしれない。
もう、周りの目なんてどうでも良かった。
生まれつきの茶色がかった髪が頬を触れ、どうせ行きもしない学校の制服に絡まる。
鬱陶しいほどに伸びた髪ですら今は気にかからない。
「また、来たよ……」
私の視線は一点に向かっていた。
高架下の二番目の柱、表からは見えない面を埋め尽くす落書きたち。
その中央には一際目立つ絵、青いスプレーで描かれた少女の横顔。
うつむいて、小さな花を手に持っている。
私はいつもその一点を見つめていた。
物悲しい顔でどこか一点を見つめる少女に惹かれて、ここに来るようになったのかもしれない。
街の人々のざわめき、雑音……それはここには届かない、周りの人から忘れられた場所、私にぴったりだ。
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