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「何十分待ったと思ってんの!?」
「講義が長引いちゃって…。」
「連絡くらいしてよね!」
「あ、瑠琉香ちゃんってば!」
そう言って不機嫌な瑠琉香ちゃんを追い掛ける。早歩きの瑠琉香ちゃんを捕まえて、横を並んで歩く。
…彼女の手を掴んで
ふと思い出した。
……卒業式。
「…瑠琉香ちゃん。離れたくないよ。」
「アタシだってやだッ…。やだ、やだ、やだよ…!」
二人共受験が終わり、無事に合格通知が自宅に届いた日。
嬉しかった。
まともに会えない日が続いて、受験の苛々が募って喧嘩してしまったりもしていたから余計に。
…けれど、それに勝ってしまうほどの寂しさが同時に襲ってきて。
久しぶりに会った瑠琉香ちゃんを見た途端、それが溢れて。
…二人で、合格通知を握り締めたまま気が済むまで泣いた。
それが嬉しさなのか
寂しさなのか
…本当に
わからないくらい泣いて
飽きるくらいの時間を彼女と過ごした。
毎日デートの気分ではしゃいで
その分喧嘩もして
けどすぐに仲直りして
仲直りする度に
お互い泣いた。
…離れたくなくて。
受験するのだって迷った。
希望する大学が違う。
「俺、S大にする!」
「ダメ。」
「瑠琉香ちゃんと一緒がいい。」
「ダメ!」
「何で?」
「…アタシは雅の行きたい所に行ってほしいの。」
初めは一方的に瑠琉香ちゃんとは違うM大を押しつけられた気がした。自分で決めた大学なのに。
けれど、瑠琉香ちゃんも俺の知らない所で泣いていて
“アタシがもう少し頭が良かったら”
“アタシがもう少し勉強していたら”
“アタシがもっと頑張ってたら”
“雅と一緒の所に行けたのに”
そんな瑠琉香ちゃんが大好きで
大好きで
どこにも行きたくなくて
…どこにも行ってほしくなくて
本当に
毎日 毎日
一緒に居た。
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