矛盾している可愛い彼女

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できる事なら誰とも離れたくなかったんだ。 聖也とも。 松ちゃんとも。 …麻生も、桃花ちゃんも、愛子ちゃんも、クラスの皆も。 でもそんなちっぽけで我が儘な願いなんて叶うはずもなくて 泣きっぱなしのまま 卒業式を迎えた。 卒業式が始まった瞬間から俺は泣き始めてしまって 聖也には 「馬鹿だな。」 と優しく言われて。 それがまた切なくて…。 でも それと同時に嬉しかった。 ありがとう。 瑠琉香ちゃんありがとう。 俺と今まで一緒に居てくれてありがとう。 これからもよろしくね。 校歌が終わる頃には俺は泣き止んでた。 今度は皆が泣き始めていて また切なくなったけど 少し振り切れた気がした。 瑠琉香ちゃんと もう会えなくなるわけじゃない。 …半ば無理矢理だったかもしれないけどそう思った。 卒業式が終わったら 皆でたくさん写真を撮った。 たくさん笑った。 ……あぁ いい思い出だ……。 「何ニヤけてんの。」 「!」 …と、そこで不機嫌な瑠琉香ちゃんの表情が視界に入り俺の思考は現実へと引き戻された。 驚いて、やましい事を考えていたわけでもないのに俺の声は裏返る。 「え!?い、いや何でも…」 「話、聞いてた?」 …しまった。 「聞いてないです…。」 ゴッ 「ゔッ!」 「人が話してんのにいい度胸だなへタレ!」 ひーッ!! 怖いよ! 俺は殴られた脳天を押さえながら、肩を強ばらせる。普段ならここでさらに毒舌が炸裂するのだが… 「…まぁいいや。早く行こッ。」 …違った。 「へ?」 「何してんのよ。殴られ足りないの?」 「いやいや、そんな事ないです!」 再び慌てふためく俺を見て瑠琉香ちゃんは笑った。 その笑顔を見て俺は安堵のため息を吐く。 「…手、繋いでいい?」 そして許しを確認するために、先を歩く瑠琉香ちゃんに片手を差し出した。 「…。」 瑠琉香ちゃんは何も言わない。 あちゃー…。 どうしよう。 「…隣に来たら繋いであげてもいいよ。」 …なんて可愛い事言うんだろう。
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