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「ねぇ、ちょっと噂で聞いたんだけどさ……ほら、1組に来た新入りの、そうそう。あの人実は、まだ……」
自分に関する噂が出回っているのも露知らず。
工藤蓮との言い争いから、もう3日経っていた。
あれから織音は、蓮に会っていない。
昼の鐘の音が鳴ったらすぐさま購買に行ってパンを買い、すぐに屋上に行くのがここ最近の生活だった。
なぜなら、教室にいれば、色々な人になぜパートナーのところに行かないのか、問われるからだ。
もういい加減、慣れてきたが、ひとつ考えたこともある。
やはり、会長の工藤蓮は、それなりにみんなに慕われていて、尚且つ、血を飲んでいないことに皆心配をしているのだ。
そして、血を飲んでいないと、吸血鬼はとても暮らしていけないという。
そんな内容の会話を聞いてると、少し後ろめたさも感じた。
もちろん、工藤蓮はつらそうに見えなかったから、本当か分からないが、相手も意地を張っているとしたら?
私の方も……と、織音は思った。
こんな意地を一体いつまで張れるのか。このままでは、クラスから疎まれ、会長に血をあげない卑劣な人間と思われるかもしれない。
現に、もう思われているかもしれないが。
そう思うと、自分の意地が馬鹿らしくなってきていた。
雛にも、色々と話を聞いた。
もうそろそろ、この生活を受け入れなくてはいけないのかもしれない。
雛が隣で、最近できたレストランの話をしているときに、そんなことを考えていた。
今は、移動教室の授業が終わり、クラスに戻ろうと階段を上っていた。
階段を上り終えた時だった。
織音の前に、女子生徒が四人立ちふさがったのだ。
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