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「少しは落ち着いた?」
高木が聞いてくる。
頷いて、深呼吸をした。
「あっちゃん、って覚えてない?」
あっちゃん……
頑張って過去の記憶を引きずり出してみる。
『あっちゃん、大好き♪』
そのフレーズが浮かんでくるが、背景が思い出せない。
「俺はずっと忘れなかったのにな…」
そう呟く。
「私、中1の冬に事故にあったんだ。
頭結構縫ったんだ…だからね、分かる事と分からない事があるの…
ごめんなさい」
うつむいて謝る。
「えっ?
知らなかった…。
こっちこそごめん」
高木が謝った。
「別に悪くないし、謝らないで良いよ。
けど、ある一言は思い出した。
背景とか分からないけど…でも恥ずかしいから言わない」
「楓ちゃんからの愛の一言だろ?」
高木が言った。
「あっちゃん、大好き♪」
無言の私に、おどけて言った高木。
高木の優しさが伝わり、笑っている自分が居た。
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