69人が本棚に入れています
本棚に追加
女王様はたちまち不機嫌そうな顔になり、
「あの忌ま忌ましい猫!」
と呟くと、私を解放して近くのソファにどかっと腰をおろした。
「女王陛下ともあろうお方が、はしたないですよ」
そう女王様に注意するビルの右腕が、肩から包帯で吊られていることに、私は今になって気付いた。
腕…どうしたんだろう?
私の視線に気付いたビルが、こちらを向いた。
しばらくじっと私を見つめた後、彼は(基本的に無表情なのでよくわかりにくかったけど)言いにくそうに口を開いた。
「アリス…今からのことは本当は貴女にはお話したくなかったのですが…」
「え?あ……、チェシャ猫の…こと?」
「………」
ビルは黙る事で私の問いを肯定した。
一気に嫌な予感が私の頭の中を駆け巡る。
砕け散るシロウサギが何度も脳裏に浮かんでは消えた。
最初のコメントを投稿しよう!