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泰久と道成は牛車で、水桔と金衛は徒歩で伏見稲荷へと向かった。
「なぜ猫から人へ?」
牛車はごとごとと道の小石乗り上げて進んでいく。
「それは式神だからね。人間の形にとらせる事もできるよ」
「では金衛とやらも?やっぱり猫か?」
道成の問いに泰久はもったいぶったように笑い「秘密」とだけ答えた。
「しかし、管狐は伏見稲荷になんの用があったのだ?」
「別に伏見に用があった訳ではないよ。ただ、用があった所の近くに伏見があっただけさ」
「ほぅ……それで、何用があったのだ?」
「それは管狐に直接尋ねた方がいいね」
道成は興味深げに尋ねるが、泰久はくすくすと笑って答える。
「……先ほどから答えをはぐらかしてないか?泰久」
道成は眉を寄せ怪訝そうな表情を浮かべる。はっきりとした答えが返ってこないので腹が立つのだろう。
「別にはぐらかしてなどいないよ。私に聞くより、実際に見たり聞いたりした方が楽しくないかい?」
「お前は物事を楽しさでしか判断できないのか!」
自分で確認したほうが良いと道成も思ったが、どうにも泰久がふざけているようにしか見えなくて本当に不機嫌になってしまった。
「はいはい、私は道成みたいに真面目ではないよ。悪く思わないでくれ」
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