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まるで泰久の言い方は怒った子供をなだめるような言い方だったが、今の道成は本当に子供のようにふて腐れている。
「そのうち見せるから。ね?」
「む……」
見せると言われて、とりあえず納得したのだろう。さすがに自分の態度が幼稚過ぎて道成は機嫌を取り直した。
「泰久様。到着いたしました」
ふいに牛車が止まったかと思うと金衛が泰久に声を掛けた。
「分かった。では道成、行こうか」
「あぁ」
二人は牛車を降り立った。
伏見稲荷――山の山頂に本社を構えている。本社までの道程には無数の鳥居が建ち並ぶ。そして全国の稲荷神社の総本山である。
「……ここを登るのは少々骨が折れるだろうねぇ」
「何を言っておるのだ。ここを登らなければ管狐を捕まえる事は出来ないのだろう?」
「まぁ……そうなのだけれど……」
入口の前で泰久はかなりうんざりしていた。高いほどではないが、かといって小さい山という訳ではないのだ。
「……お前達は誰じゃ!?」
泰久達が立ち往生しているのを見て業を煮したのか、一人の童が声を掛けてきた。水桔より幼く見える童は警戒しているのか、ひどく素っ気ない。
「あ、管狐」
水桔は童を見てこう言った。
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