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「管狐」
「な、なんじゃ!」
管狐は泰久の声に涙を強引に拭いながら答えた。
「ではお前はあの歌の『本当の意味』を…知っているのだね?」
「本当の意味だと?」
泰久の問いに管狐は無言で頷いた。
「それならば、その女に逢いに行こうか。……その人に教えなければいけないからね。」
管狐はまた無言で頷いた。
「それで、教えるとは?いや、そもそも歌の『本当の意味』とは?」
さっそく泰久と道成は牛車に乗り込み、女がゆく橋へと向かった。今から向かえばちょうど夕刻の、女が来る時刻に間に合う。
「あぁ……実はあの歌には道成が訳した意味と、もうひとつ意味があってね」
それを聞いた道成はひどく驚いた。驚いて、とても悲しんだ。
――冬を背に 我が身に積もる雪竹の おつる滴のいづことあらん――
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