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昼飯後の落雁も食べ終わり、水桔はとても満足したようだ。水桔はそのまま家の留守を預かり、金衛だけ泰久達の供に着いた。
牛車には泰久と道成、そして管狐が乗っている。
「さて、管狐。聞きたいことがあるのだけれど」
牛車の揺れを体に感じながら、ふいに泰久が口を開く。
「な、なんじゃ?」
管狐はたじろいだ。泰久の表情にわずかばかりの冷気を感じる。
しかし管狐はいつかこの事について問われると確信していた。いや、少しでも力がある陰陽師であれば必ず問うであろう。
「お前は『誰の管狐』なんだい?」
泰久はゆっくりと、確実に管狐の目を見据えた。
「誰のって……姫の管狐ではないのか!?」
道成には訳が分からない。管狐を探して欲しいと言ったのは雅子だ。だが、泰久のそれは別の人を指している。
「確かに姫の手には渡っているが、山の中に住むようなモノを姫自身が捕まえられる訳がない。管狐、お前の本当の主は誰だい?」
「そ、それは……」
管狐は拳を袴ごとギュッと握り込んだ。額には冷や汗も出ている。
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