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「……事情を話して戴けると私も助かるのですが……」
相変わらずの微笑を浮かべ、泰久は雅子に問う。
いつもはたっぷりと世話話をした後、相手の話が尽きるのを待ってから本題を切り出すのだが、今回はやけに早く本題へと向かった。
「もちろんです。ちゃんと事情をお話しなければ……」
そういうと雅子は管狐探しについて話し始めた。
ある人物から管狐を預かって欲しいと頼まれた。しかし管狐は既に主の手元にいない。そしてその人物は「自分から預かったことは泰久には伏せて置いて欲しい」と言い、雅子へ泰久に管狐を連れてくるよう頼んだのだ。
「なるほど……雅子様にはご苦労をお掛けしましたこと、深くお詫び致します」
今までの事情を知った泰久は雅子に深く頭を下げた。
「わたくしは何もしておりません。本当に管狐がおるのかすら、分からなかったのですから。」
初めてあった管狐に眉を寄せながら笑ってみせた。雅子と目があった管狐は恥ずかしそうに頭を下げる。
「よく、泰久めにご依頼をしていただきましたね。捨ておく事も出来たでしょうに……」
「えぇ。あの様に夢の中で頼まれてしまっては断ることさえできませんので」
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