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「おぉ!ここに居られましたか。実は……」
「嫌だ」
道成が座る動作と一緒に放った言葉は座りきる前に返事が帰ってきた。
「なっ……!ま、まだ何も言ってはおらぬ!」
「だいたいの想像はつくよ……。またなにか厄介ごとを持ってきたね?」
「そ、それは……」
泰久からダルそうに言われ道成はしゅんとなってしまった。その姿はまさに拗ねた犬。犬の耳が付いていたら間違いなく耳は垂れているだろう。
その姿が余りにも可愛らしく、とても同じ歳には見えない。ついつい口の端が持ち上がってしまう。
「泰久っ!また、俺をからかかっておるのか!」
さっきは落ち込んで次は怒ってる。その移り変わりの速さにさらに笑いが出てきてしまう。
「泰久!!」
「いやいや悪かった。大丈夫引き受けるよ。しかし、この仕事を片付けなければ動けなくてね……」
泰久は右の書簡を指さした。半日でこの半分の量をこなしたのだから、普通に考えてもあと一日分はかかる。
「……や、泰久……」
「なんだい?」
「そなたはこれ全部を一刻で終わらせられるのでは!?」
道成が示した「これ」は全部を示していた。つまり右と左の両方。
「……面倒でね……」
「さっさと終わらせぬか!」
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