夏は夜

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「すまないが、明日の朝私の家に来てくれないか?」  泰久からの急な誘いだった。  どうやらかなり急で、大事な用らしい。泰久の苛立ちと焦りが混ざった表情を珍しく見ることができた。  管狐の件から三日が絶った。それまでに泰久は色々と調べ物をしていたようで、自宅と図書寮(ずしょりょう)を行き来していたらしい。  呼ばれたということは、何か進展があるのかもしれない。道成は神妙な面持ちで泰久邸の門をくぐった。 「泰久ー、言われた通りに来たぞ」  だが、道成を出迎えたのは別の人物であった。 「お待ちしておりました。道成さま……」  おっとりとした口調で話すその人物は、緋色の袴に脇差しを指しており、深紅の髪を後ろで束ねて烏帽子を被っている。明らかに男の服装だが、その者は妖艶な色香を漂わせていた。 (白拍子か……)  道成は顔を赤く染めてこの白拍子を魅入ってしまった。 「残念だけど、火絃は夜のお供をさせることはできないよ」  火絃(ひいと)という名の白拍子の後ろの方から、くすくすと笑いながらこの屋敷の主が出てきた。 「お、俺は別にっ!そのようなことは……」  泰久は更に顔を赤らめ動揺している道成に、さらに笑いが込み上げた。
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