春はあけぼの

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「なんでも、左大臣様の姫君が探し物を見つけて欲しいとのことでな」 「探し物?なぜ私がそのようなことをせねばならんのだ……メンドクサイ……」 (さっきからそればっかりではないか!!)  二人は大内裏をさくさくと歩いている。泰久と道成の美形が二人並んでいるのだ、その姿に誰もが好奇や羨望のまなざしを向け感嘆の溜め息を漏らしていた。しかし泰久はあまりやる気はないらしい。むしろ皆無だ。ぶつぶつと愚痴をこぼしている。その愚痴が道成にしか聞こえてなくて幸いだった。 「それで?その探し物というのはなんだい?」 「いや……それが内密に事を運びたいと左大臣様が言っておられてな、直接姫君に会いに行ってくれとおっしゃったのだ」  ということは帝からの贈りものか、やんごとない人からの預かりもの辺りか―― 「それにしても男を自分の娘に通わせるなど左大臣様もずいぶんお心が広い方でいらっしゃる」  泰久はくすりと笑ってみせた。 「は?ただご依頼を聞きに伺うだけではないか」  道成は訳が分らないという風に小首を傾げた。ただ話を聞きに行くだけで、心の狭い広いは関係があるのか?と寄せられた眉から表情が見て取れる。
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