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雅子は眉を寄せながらこう言った。よっぽど大事なものらしい。
「誰ぞに盗まれでもいたしたのか!」
探しても見つからないのなら、きっと盗人にでも盗まれたのかもしれないと道成は思ったがどうやら違うらしい。
「普通の人なら誰も欲しがらないものです。つい油断をしたばかりに逃げてしもうて……」
「に、逃げた?」
てっきり何かの『物』だと思っていた道成は「足でも生えたのか?」となにやら混乱している。
「その逃げた『もの』とは何でございましょう」
しかし泰久はなぜ自分にこの話が来たのか分かったようだ。
「あぁ……どこに行ってしもうたのやら。わたくしの管狐……」
「…………は?」
道成の声が空しく部屋に響き渡った。
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