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「……お?かわいいな」
道成が考え込んでいると一匹の黒猫がそばに来ていた。
毛並みはツヤツヤ、目は大きく愛嬌があってすらりと伸びた尾がハタハタと動いてなんとも可愛らしい。
道成が喉元をくすぐってやるとぐるぐると喉を鳴らしてそのまま道成に懐いてしまった。
ものすごく。
「泰久ぁっ!た、助け……っ!」
黒猫が膝の上に乗ってきたかと思うとそのまま飛び付き顔をペロペロ舐めてくる。
ものすごい勢いで。
「おや水桔、お前そんなに道成が好きなのかい?」
「感心してないで止めてくれ!」
どうやら水桔(みずき)と呼ばれた黒猫はいたく道成を気に入ったらしい。道成が嫌がっているのもお構いなしにじゃれついている。
「ほら、道成が嫌がっているよ。本当に嫌われる前に離れなさい」
そう言いながら水桔を抱き上げた。水桔はとても名残惜しそうだった。
「ついでに金衛(かなえ)と一緒に都に異変がないか調べて来てくれるかい?」
その言葉を理解したのか水桔は鳴声を一つあげ、二人から去っていった。
「い、一体今の猫は……?」
「あぁ、私の式神だよ」
泰久はさらりと言ってのけた。
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