日向家の休日

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そう、あの時。 中学一年生。反抗期というか思春期真っ只中の時に、親父の単身赴任に母さんが外国へとついて行った。両親の不在、そして修治がプチ引きこもり状態という理由で、俺が強くならなくちゃ、なんて思って不良になって一年が経った頃。 俺は『喧嘩無敗』と呼ばれるまでになり、俺の周りでは悪い噂が絶えなくなった。勿論、その悪い噂というものは根も葉もない只の噂話であり事実ではない。そして、そのせいで愛理が学校や地域の人達から色々と嫌味の様なことを言われているのに俺は気づかなかった。 そのことに気付いた修治が俺を大根で殴って、 「お前のすることに文句は何も言わん。だが、他の人に迷惑をかけるな」 とか言ったんだっけ。 それでようやく俺は気付けたんだよな。俺は『強さ』を履き違えていたことを。 「なぁ修治。まあ、その、えーっと……、ありがとな」 「ん?別に気にするな。今、お前は女の子なんだしな」 「いや、それもあるけど…、ほら、『あの時』のことも含めてのお礼だよ。俺を大根で殴った時の」 「『あの時』か…。それも気にするな。お前に偉そうなこと言ったおかげで今、働けてるわけだしな。そうでもしなきゃ格好がつかん」 「つーか、なんで大根で殴ったんだ?」 「お前に素手で勝てるわけないだろ」 「そんなことで!?ってか次からは食べ物を粗末にするなよな!」 とまあ、そんなことを話しながら俺達は少しだけ仲良くなり、帰路に就いた。
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