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「ただいまー」
玄関のドアを開けると、愛理はなぜか外出用の服を着て階段を降りている途中だった。
帰宅した俺に愛理は、
「おかえりー。お腹減っちゃった。早くご飯作ってぇ」
と、猫なで声で甘えてきた。
今の愛理はご主人様モードなので、『買い物に何時間かかっているの!?』くらいの文句があると思っていたんだけどな。
「ご主人様とメイドはもういいのか?」
「そんなのもういいって。でももう少し陽にぃのメイドさん姿は見たいかなー」
「はいはい。んじゃ飯作るわ」
と、俺は腕まくりをしてきちんと手洗いうがいをした後、調理に取り掛かった。
昼食の時と同様に俺の作った夕食は大好評だった。
食器洗いを済まし、今日の家事を終えた俺に愛理が異様なくらいに絡んできた。
まあ、妹に懐かれるというのは悪くない、というかむしろ嬉しいことである。そこから愛理が寝るまで、昼にやったゲームをしたりトランプをしたりテレビを見ながら雑談をしたりと普通に楽しく過ごした。
そういえば今日の愛理は早寝だったな。『今日は疲れたよぉ』なんて言って10時前には部屋に戻って行ったし。つーか、今日って俺が疲れた日だよな。
風呂上がり。俺は無駄に長い髪を乾かして自分の部屋の前に居た。
そういや今日は起きたっきり自分の部屋に行ってないなぁ。今着てる服だって愛理にメイド服着せられた時に脱がされた服だし。
と、そんなことを思いつつガチャリとドアを開けた。
「……」
あれ?
俺の部屋ってこんな乙女チックな部屋だったっけ?
カーペットやカーテンはピンクだし。ベッドのシーツや枕も水玉模様だし。バナナの抱き枕もある。そして何なんだよ、この可愛らしいぬいぐるみの数々。
完全に愛理の趣味じゃねえか。そういや外出用の服着てたもんなぁ。色々買い揃えやがったに違いない。
何か文句を言ってやろうとは思うが、今日は愛理も寝ちゃっているし(とゆうか逃げたっぽいし)抗議は明日にしよう。俺も眠いし。
そう決めた俺はバナナの抱き枕を抱いて、朝起きたらバナナ生えてないかなぁと淡い期待を抱きつつ、長い一日を終えたのだった。
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