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鈍い音と共に鬼川は片膝を着いた。血が頬を伝い地面に滴る。
見上げると神崎が殴った拳を微かに震わせていた。
鬼川はふっと口元を歪ませる。
「…どうした、終わりか」
「な、んでや」
鬼川なら殴られる瞬間明らかに此方の動きが分かった筈だ。
だから思い切り振りかぶったのに…。
避けれなかったんじゃない。
避けなかったのだと神崎は悟った。
(何、格好つけてるんや。わいがみっとも無くなるだけやろ…)
神崎はぐっと拳を握り絞めゆっくりと降ろした。
「…止めや、こんなんで勝っても少しも嬉しゅうないわ」
「…………」
「優理ぴょんなら奥の倉庫や。首長くして待っとるで」
「……悪い」
鬼川はすれ違い際にそう呟いた。
何が悪いなのか、本当に悪いのは自分の筈なのに。
(…変わってへんな龍二っち。不器用で、でも人一倍誰よりも優しくて…)
「くそっ……!」
今更嘆いても無駄だと分かっていたが、煮え切らない想いが溢れ思わず言葉を吐き捨てた。
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