第三・五話

11/18
前へ
/117ページ
次へ
鈍い音と共に鬼川は片膝を着いた。血が頬を伝い地面に滴る。 見上げると神崎が殴った拳を微かに震わせていた。 鬼川はふっと口元を歪ませる。 「…どうした、終わりか」 「な、んでや」 鬼川なら殴られる瞬間明らかに此方の動きが分かった筈だ。 だから思い切り振りかぶったのに…。 避けれなかったんじゃない。 避けなかったのだと神崎は悟った。 (何、格好つけてるんや。わいがみっとも無くなるだけやろ…) 神崎はぐっと拳を握り絞めゆっくりと降ろした。 「…止めや、こんなんで勝っても少しも嬉しゅうないわ」 「…………」 「優理ぴょんなら奥の倉庫や。首長くして待っとるで」 「……悪い」 鬼川はすれ違い際にそう呟いた。 何が悪いなのか、本当に悪いのは自分の筈なのに。 (…変わってへんな龍二っち。不器用で、でも人一倍誰よりも優しくて…) 「くそっ……!」 今更嘆いても無駄だと分かっていたが、煮え切らない想いが溢れ思わず言葉を吐き捨てた。 .
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

463人が本棚に入れています
本棚に追加